まずは読書感想文を一つ。(その2)

(その1から続き)で、ようやく「実践経学」

 実はまだ半分くらいしか読んでいません。(さらに「武士の娘」は目次しか見ていない。)でもその範囲で感想を書きたくなったのも事実。

 一読、まずは古い。予想通り古い。自分が若かりし頃流行ったQCサークルとか、そんな時代の香りが立ち上ってくるようです。今どきの若い方が読んだらこれが経営書とは思わないでしょう。MBA的な解説やコンサル的な語り口とは全く異なる物です。

 というと否定していると思うでしょうが、実はこれ、褒めてます!いや、褒めるはおこがましいから、感心してます。まさに本屋で目にした時の期待を裏切らないずしりとした手ごたえで、我が国の経済が世界を席巻していた時代の熱気がムンムンしています。

 その要諦は、

 全員が経営者の意識を持って、自分(自社)の食い扶持は自分で稼ぐという「自主責任経営」の精神で、経営理念のもと同じ方向を向いて団結して事に当たる、ということ。そのためには何が必要か、どんな施策が必要か、精神論や個々具体の方策やらを体験的に書いておられる。芯は”上記のことをなすために”何をするか、と極めて明確です。

 ラグビーになぞらえると、まずはチームとしての大きな戦略、例えばフォワード中心でとかバックスの展開からとか、あるいはキックを中心にとかある中で、試合が始まれば一人ひとりがその場で考え、持てる力を全開に責任をもって動く。それが大きな塊として機能するチームは強いということでしょう。one for all,all for one

 それが今日の経営論ですと、上記で要諦とされている事にはほとんど触れず、様々な理論や手法やらが、それもマーケティング、戦略、財務、人事労務、資本政策などなど機能別に語られるのが普通で、上記の要諦などは意識の外の感があります。

 私が思うに、MBA的思考は「プロ経営者」が統治する組織が前提となっていて、その場合は経営する者とその指示命令を受ける者との峻別がある。組織の一体感とか末端までが経営者意識を持って、などの経営姿勢とは相いれないように感じています。

 この本を読んで(まだ半分ですから、今後変わるかも知れませんが)この松下イズム的経営は、少なくとも中小企業にあっては今日に至るまで、我が国では最適な経営理論、経営方式であり続けているのではないかと結構大真面目に思いました。末端社員までが経営者のつもりで考えて、自分の食い扶持は自分で責任をもって稼ぐ姿勢。そして経営理念のもと皆が目線や意識をそろえて事に当たる。日本人に馴染みますよね。

 でもそれが、いつしか外来の経営理論に席巻され、古臭いとか精神主義とか全体主義的とか批判的な風潮に代わり、その象徴のような社歌や社員旅行が衰退するのと歩調を合わせて日本も衰退したように感じます。だから社歌や旅行を復活せよと言っているわけではないので念のため。要諦はそこではありません。

 若い人がどう感じるかは自信が有りません。でも若い方も意外と会社での人と人との良い関係というのは嫌いじゃないと感じていますし、ちょっとした工夫次第できっと現代にも通用する方式だと信じています。